芽キャ^の

芽キャベツの二日酔いについて考えるすべを喪ってしまった私たち / 詩とTRPG / https://twitter.com/Wanazawawww

ヘソグルメ伝奇(ファンタジィ) 噴出(スプラッシュ)!肘ミルクマン 第214話 「vs. 第二の人生」

1
やぁ! お初にお目にかかる!
俺の名前は誰が呼んだか……肘ミルクマン!
俺は肘から、超古代文明ヘソグルメにおいて完全食とされた「肘ミルク」を出すことができる!
君たちの店舗に、俺を「肘ミルク係」として是非とも雇い入れていただきたい!

2
俺のこれまでの経歴はこうだ! 俺はこれまで、親代わりだった叔父の仇、裏社会の覇者、現代オカルト世界の支配者、強大にして狡猾な「つむじ鮭フレーク皇帝」との闘いを続けていた。
それは15年に及ぶ長い闘争だった……盟友の死、恋人の裏切りと別れ、第二の故郷となって俺を支えてくれた組織の壊滅、そして良きライバルであった「爪先にんにく醤油リーガー」との……ああ!
しかもそれらを乗り越えて知った、つむじ鮭フレーク皇帝の正体に俺は天を仰いで慟哭せざるを得なかった。
なんと、やつは……俺の実の兄だったのだ!

3
なぜ兄が叔父さんを殺さなければならなかったのか、それはここでは語るまい。
やつには秘密があり、叔父さんにも秘密があったってことだ。
ともかく、俺は高濃度肘ミルクが持つ破魔の力でもって、つむじ鮭フレーク実兄とその配下を闇の彼方へと押しやり、ヘソグルメの門は、やつに関する全ての人々の記憶とともに堅く封印された。

4
悪は去った!
しかしそのあと俺を待っていたのは、この不況の世の中……第二の就職氷河期ってやつだった。
如何な世界を救った英雄と言えど、それを知る者は最早、この世には俺しかいない。
30を超えて、肘からミルクを出すことだけが取り柄の男に、当然、職などなかったというわけさ。

5
安いネットカフェに寝泊まりし、自分の肘から出るミルクを啜りつつ、日雇いのアルバイトを死んだ魚のような眼で探す毎日……。
世界覇者に勝って、世界に負けた……負け組の俺の目に偶然飛び込んで来たのが、君たちの求人だった!

6
……信じてくれなくたっていい! だが俺は、この面接で、俺の全てを説明できたと思ってる!
俺には肘からミルクを出すことしか取り柄がない。
しかし、肘からミルクを出すことができる!
俺の肘ミルクは栄養満点! しかも……とてもうまい!
濃縮して勢い良く噴射することで悪を倒し、君たちの身を助けることもできる!
是非とも君たち、ネットルームマンボー蒲田西口店に雇い入れてほしい!
成果は、きっと出す。

良い答えが返ってくることを、待っている。

(きちんとした文章媒体では世に出てないっぽい詩です)(詩っていうか……一人声劇の原稿……?)(元はWebラジオに投稿したものを朗読詩に改稿したものです)(肘ミルクマンの未来はこののち一体どうなるのだろうか)(それを知るのは肘ミルクマンのみ……)(……今のところは!)

(noteにて2020/12/05 17:35公開)