芽キャ^の

芽キャベツの二日酔いについて考えるすべを喪ってしまった私たち / 詩とTRPG / https://twitter.com/Wanazawawww

シノビガミハウスルール案: ハグレモノ下位流派 - 雉鳴倶楽部

雉鳴倶楽部
条件: 《流言の術》か《伝達術》、もしくは《言霊術》を習得している。
流儀: 言葉の力を活用する。
仇敵: 自由 (キャラクター作成時に決定)。
「雉も鳴かずば撃たれまい」という諺に由来する自嘲的な名前を持つ、言葉を操って自己表現することを趣味や仕事にする者たちの集団です。忍者詩人や忍者ラッパーたちが倶楽部の発起人であるためその大半は忍者であり、作家、詩人、ラッパー、シンガーソングライターといった者が所属しています。しかし、彼らは本質的には烏合の衆であり、しばしば主義や思想、表現方法の相違を理由に、個人間や小集団間で半目し合うこともあります。

下位流派忍法
辻芸 (つじげい)
タイプ: 攻撃忍法
間合: 3
コスト: 3
指定特技: 可変
集団戦。この忍法の指定特技は、攻撃を行うときに、忍法の使用者が《流言の術》、《伝達術》、《言霊術》の中から一種類を選ぶ。間合内にいる自分よりプロット値が低いキャラクター全員を目標にし、攻撃が成功すると、目標に集団戦ダメージを1点与えるか、目標を逆凪にすることができる。集団戦ダメージを与えるか、逆凪にするかは、目標ごとに変更してもよい。
——場所を選ばず行われる歌唱、朗読、フリースタイル。そのパフォーマンスは戦場にあってさえも観客の心を打つ。

裏〇 (うらサイファー)
タイプ: サポート忍法
間合: なし
コスト: なし
指定特技: なし
1サイクルに1回だけ、自分が登場しているドラマシーンで使用できる。そのシーンに登場しているキャラクターから、好きなだけ選んで目標にできる。また、自分も必ず目標となる。忍法の使用者は、使用時に《流言の術》、《伝達術》、《言霊術》のうち一種類の特技を選び、目標はその特技で判定を行う。判定に失敗した目標は集団戦ダメージを1点、射撃戦ダメージを判定に成功した目標の人数と同点受ける。目標にこの忍法の使用者の宿敵に該当するキャラクターがいた場合、忍法の使用者が使用時に宣言することで、集団戦ダメージにおいて「戦国変調表」を使用することができる(もちろん、この宣言は撤回できない)。
——裏路地、廃屋、果ては異界で行われる、忍者ラッパーたちによる尋常ならざるサイファー。

本歌取 (ほんかどり)
タイプ: サポート忍法
間合: なし
コスト: なし
指定特技: 流言の術、伝達術、言霊術
自分の手番に使用できる。指定特技の判定に成功すると、自分が登場したシーンで使用され効果が発動した忍法の中から、その場で使用できるものを一つ選んで使用できる。その忍法の指定特技はこの忍法の指定特技と同じものになり、使用時のファンブル値は2、コストは1上昇するが、間合は1広がる。
――素晴らしい忍法の一部を借用し、自分の短歌に詠み込む。

隠原稿 (かくしげんこう)
タイプ: 装備忍法
間合: なし
コスト: なし
指定特技: なし
この忍法を習得した時、「呪い」か「催眠」のどちらかの変調を選ぶ。誰かの攻撃によって変調を受けた時、攻撃を行ったキャラクターは、選ばれたのが「呪い」であれば《呪術》、「催眠」であれば《意気》の判定を行い、失敗すると、選ばれた変調を受ける。
——おっと、うっかり未発表原稿を読まれてしまった。読まれたからには気に入ってくれたらうれしいのだが……。

※※※※※※※※

詩の話をしていたと思ったら急にTRPGの話をしだしたから妙だぜと思ったでしょう。詩人のための流派を作りたかったんですよ。

どうしておれは戦国変調を与えたがってるんだろう。戦国変調表使ったことないから、これは単なる憧れなんだと思う。
変調ばっかりでほとんど攻撃してないけど、ひょっとするとすげーコンボとか見つけられるかもしれない。使いやすいものにするよりは活用法がわからん流派にしたいので、強すぎたら適当にナーフしてください。

 

君たちは明日から二度と皮肉を言うことができなくなってしまう

君たちは
明日から二度と
皮肉を言うことができなくなってしまう

その呪いの起源は中国は夏王朝の時代まで遡る
夏王朝の賢いんだかバカなんだかわかんないある道士が
「皮肉」という人類史とともに歩んできたとも言える偉大なるレトリックを憎み飽き飽きたのだった
怒りに任せて放たれた皮肉というもののなんと愚かしいこと
何が愚かしいって大抵全然面白くないのにみんな言ってやったって感じになってるってこと
そしてその愚かしさを嘆き怒りを鎮めたまえなどとのたもう者のなお愚かしいこと
何が愚かしいってそいつはお前みたいなやつにこそ怒ってるんだってえの
しからば夏王朝の賢いんだかバカなんだかわかんないその道士
皮肉というものが一つ世にこぼれるたびに
天を衝く塔の上に置かれた大釜の中に
小豆が一粒こぼれるようにまじないを込めた
小豆が大釜になみなみあふれるころには大釜はその重みに耐えかねバラバラに割れて
空からは腐った小豆が降り注ぎ
世界は腐った小豆まみれになってしまうだろう
どうしてそんな迂遠なまじないにしたのかはよくわからんが
それもやつなりの皮肉だったのかもしれないね
全然面白くないし


おれは今朝方その大釜を見に行って
釜になみなみと溜まった腐った小豆を見たよ
明日にはこの大釜はバラバラに割れて
世界は腐った小豆まみれになってしまうんだなと思ったよ
その足でおれはここに来たよ

大人の喧嘩をする君たち それを見て手を叩く君たち
かつて賢かった君たち かつて賢かった君たちをバカにしていた君たち
賢いので先回りで嫌味をいう君たちと影で君たちの嫌味を言うもっと賢い君たちと
日向で君たちの嫌味を言うもっともっと賢い君たち
そして本当は最初からバカだったおれたち

呪いは明日成就するのだ!

君たちがこの世界を腐った小豆まみれにしたければ
世界最後の日のために最高の皮肉を考えておくんだな

そして君たちがこの世界を腐った小豆まみれにしたくなければ
君たちは明日から二度と皮肉を言うことをやめて...

いや君たちがこんな話を信じるとは思えないから
やはりこの世界は明日腐った小豆まみれになるんだろう
やっぱりこの世界は皮肉な最後を迎えるってことになるんだろう

ということはつまり
どちらにしたってつまり
君たちは明日から二度と...

(2018年8月19日 ポエトリースラムジャパン2018東京Bのために)

 

東京問う 空煌々と照る

スマートホンの壁紙が2月のカレンダーのままだ
スマートホンの壁紙が2月のカレンダーのままだということに気づく
スマートホンの壁紙が2月のカレンダーのままだということに気づく4月2日
スマートホンの壁紙が2月のカレンダーのままだということに気づく4月2日 は上京記念日だと思い出す
東京問う 東京都問う それ スマートホンの壁紙 2月のカレンダーのまま
スマートホンの壁紙 2月のカレンダーのままだけど いいの

あと これ何が言いたいの 何が言いたいの いいの

2年前の4月は桜がまだもっと残ってて
桜って別に好きでも嫌いでもなかったけど
新サラリーマンのおれが 帰宅途中の多摩川で見た夜桜は
ぼんやり光る東京の夜空にぼんやり浮かんでいて 不気味でさ
桜 悪くねえじゃん って思ったっけな
東京 いいじゃん 不気味な街じゃん って 思ったっけな

東京照る 煌々と照る 煌々と照る空
それで 何が言いたいの 何が言いたいの
音がいいから言ってんの いいの
おれユニークって言いてえの いいの
いいならいいけど いいの

東京問う 空煌々と照る
空煌々と照る 音がいい
おれはユニーク 満足してる
おれはユニーク おれのスマートホンの壁紙 2月のカレンダーのまま
おれの桜はぼんやり光る東京の夜空にぼんやり浮かんでいて不気味でさ
おれは不気味 おれはユニーク
おれは満足してる
いいの
いいならいいけど、いいの
いいならいいけど
いいの
よくねえの
よかったらこんな詩書いてねえんじゃねえの
物調べて頭使わねえの
頭使って物書かねえの
東京は場所であって お前じゃねえ
2年前に憧れていた街
東京がじゃねえ
お前が お前に 問え

東京問う、東京、空、煌々と照る
音がいい 不気味
それでいいよ
とりあえずそれはそれでいい
そう思う4月2日
でもそうじゃねえ
そう思う4月2日
それはスタート地点
ここはスタート地点だよ
わかってんの
だからこれは抱負
わかってんのお前
おれ 本当にわかってんの
スマートホンの壁紙 2月のカレンダーのまま
まあそんなのどうでもいいけど
でもそいつはもう変えなよ
今夜いい桜でも見つけてさ
それまでは2年前撮った桜の写真でもいいさ
だって今日は 4月2日で
お前は スタート地点にまた立っていて
おれは これからまだ もっと遠くへ 走れると思うんだよ

(2018年4月2日 上京記念日に)

 

(noteにて)

悪いもんじゃないし後悔もないよのうた

人生の肝要ごとは二つ 「生きるって何」と「謳うって何」
友人 に 付き合いをやめたほうがいいよ と 言われるような 友人 に 付き合いをやめたほうがいいよ と 言われるような友人 たちのうちで 暮らす毎日 in Tokyo は 悪いもんじゃないし 後悔もない が 振り返り何か思うことは ときおり ある リスクヘッジがめちゃくちゃな我々は「価値」なるものに目を瞑る…… 或いは著しい独自解釈を行う…… それだ そのそれ その行為をぼくの友人たちは 生きる だか 謳う だかと呼ぶ そういう友人 たちのうちで 暮らす毎日 in Tokyo は 案外 悪いもんじゃ ないし 後悔も ないよ。
まあもう金も貸さないし 幹事も二度とやらねえけどな。

(2018年2月)

(noteにて2018/03/06 18:49公開)

忘れ去られた(でもきっと誰かは覚えている)神はあまりにも優しく人に寄り添って

その神の名は もう忘れ去られたが 奇妙で呼び難い名前だったのは 確かだ
しかし 名前がわからないので もう二度と伝承を調べようもない

昭和の在野の研究家・待田誠道のレポート(1992年) によると
彼の神は 人間に 殺人教唆という 手法と 概念とを 齎したのだという

それは 複数の英雄譚の元に なったのかもしれないし
もしそんなことだと 幻滅かもしれないし
どうせそんなことだろうと思ったと 笑うしかないかもしれない

なあ それはいつも夜なんだ
ぼくはきみの後ろを追けていて 右か左から上ずった声でこう言うんだ

"手に持ったものを振り回したいんだろう
そいつが憎くて憎くて 馬鹿馬鹿しくてたまらなくて
親から子から 恋人も
構いやしねえ 誰も見てねえよ 誰が見てたって構わねえよ
壊して ぶち混ぜて そして
なあ! はやく はやくやれよ!"

なあ 信じてくれよ
ぼくは恨む事を憎しむ事を認め許すつもり だったのであって
きみに憎しみを持ってほしい とか
ぼくの代わりにきみだけでも恨みを果たしてほしい とか 思いもしなかったんだよ
今の今まで ぼくは ぼくがきみに 幸せになってほしいものとばかり
そうとばかり……
……

彼の神は絶望を謳うというが 歌のため絶望を願ったかどうかまではわからない 今はもう誰にも
でもきみが 殺してしまいたいと 聲もなく囁く度
大きく虚ろな霊(たましい)はどこかで和(やす)らぎ
そうすることが人々にどのような働きを齎すのか 現在の研究ではまだ解明されていないのだという

その神の名は もう忘れ去られたが
奇妙で呼び難い名前だったのは 確かだったはずだ
名前は忘れ去られた みんな忘れちまった だからもう二度と 伝承を調べようもない

そんな神がいたことを 誰も確かめようがない
それでも確かに 人の世に霊(たましい)はあまりにも優しく寄り添う
そしてその霊(たましい)の名を きみが覚えているのじゃないかと

最近ぼくは きみに訊きたくて仕方がないのだよ

(2018年1月)

(noteにて)

不吉百景 5.「妙な女とすれ違った話」

よろしくお願いします。
「あっ、はい。よろしくお願いします。……あのー……これこないだのことで、夕方の、下校中の時の話なんですけど。私帰宅部なんで、部活の子と違って遅くないうちに帰ることもあるんですけど、そういうときは歩道のない、狭くて、あんまり人通りのない道を通って帰るんですね、近道だから。そこ通ってたら、向かいから女の人歩いてきて、私とバチーッと目が合った、んですね。まあまあくらい美人だったかなと思うんですけど、眼力強い人だなーって思いましたね。で歩きながら、とりあえずちょっと会釈して、その人もそれは返してくれたんですけどでもその人まだこっち見てくるんで、なんだろーこの人すごい見てくるな恐いなあ……と思いながら目を逸らせずにいると、その人すれ違いざまに、私のこと横目で見ながら私の後ろに回ったんですね。えっなになにこわい、と思ったんですけどまだ私その人のこと、ずっと見てるんです、でその人そのまま私の後ろ通り過ぎて、えっと右からその人すれ違ったんでそのまま後ろ、で、私の左に来て、そしてそのまま、要は私の周りを回ってUターンして、元来た方、だから、私の進行方向に、こう、来て、そこで、その人私の方見てるんですけど顔めっちゃ強張ってるんです、そんで彼女走り出して、行っちゃったんですよ。行っちゃったあと私、ぼそっと、ええーっ……って言っちゃいましたけど。でも、そのあと強烈な違和感来て。あれっ、ちょっと待てよっ、おかしいぞっなんだなんだあ、って……で、気が付いたんですよ、だって私……あの人のことずっと見てたから、首、さっき、右から一回転してたじゃん?!って……。あれーっおかしい、あれーっ、って、首とか触って、いや、当然なんもないんですけど、ふふっ、家帰ってから鏡見ても特に何もないし。痛みとかないし。あと何回か、ぐいーって首回してみようとしたことあるんですけど、普通に痛いし。えっへへ、そんでそのあとその道何度か通ってるんですけど、女の人のこと気になるし、でもあの女の人ともういっぺん会ったことまだないですね。考えてみたらあの人にとったら私絶対妖怪じゃないですか?たぶん、ろくろ首的な?ってことで絶対あの道二度と通らないですよ、それって私に会いたくないから。そう思うと興奮しちゃう感じないですか?私ろくろ首になっちゃったのかなあ。つって……ふふっ。両親に訊いてみたいんですけどまだ訊いてないんですけど、訊いたら、そうかお前ももうそんな歳か、ついに説明するべきときが来たんだななんつって。言われたら凄い……ふふふ……凄い。うん。あっあと気になってること言っていいですか?すいません一方的に話しちゃって、でもね、首回っちゃったあと女の人が驚いて走っちゃうのはわかるんですけど、その前に私のことじーっと見てたのって、なんなんですかね?なんかもうその時から私、おかしかったのかな?ろくろ首現象の予兆的な……あー、いや、霊感ある人だったのかもしれないですね。あっ、いや霊感て。霊感、私が感じられちゃったってことか。ふふっ!うふふ……えーと、すいません、そういう話なんですけど……どうでしょう?」
最高です。ありがとうございました。今度また首が回ることがあったらぼくにご一報ください。
「あっははははははは!……うくくくく……ありがとうございましたあ!」

(2017/09/15採話)

 

(noteにて)

時計を見ると2時

 ビクン!

 ……。
 時計を見ると2時。珍しく深夜に眼が覚めたらしい。

 但しこの場合、珍しいのは深夜に僕が寝ているということの方だ。今日は仕事もないからと久しぶりに気まぐれを起こして東京の街を歩き回ったら、いつの間にかすっかり疲れてしまった。それで、普段見ているアニメなんかも録画予約してあるのだからと放っておき、12時を過ぎたらそのまま床で入眠したのだ。まあ……普段寝ない時間に、照明をつけたまんま、それも床で寝てるんだから、この覚醒は一つの必然だろう。

 ――はて。何か気がかりな夢を見ていたような気がする。

 なんだったかな?
 しかし気がかりな夢を見ることの方は僕にとってはよくあることだ。なんてったって僕はフランツ・カフカだから。……だから何? 自分へのウケ狙いのように身体を見てみたが、やはりどのパーツも毒虫にはなっていなかった。そりゃそうだ、僕はグレゴール・ザムザじゃないから。あとあんまりこれはおもしろくない。何処にも使えない。ボツ。

 うーん身体がだるい。肩と腰が痛い。頭も痛い気がする。これも「そりゃそう」だ。電気を消して今度こそ朝まで寝ることにしたが、その前にTwitterを一応覗いておこうと思った。辺りを見回して眼鏡とiPhoneを探す。何処に置いた記憶も無かったが、果たして、それは共にテーブルの上にあった。僕は眼鏡を掛けてiPhoneに手を、

ほくほくのポトフ」。

ほくほくのポトフ

ほくほくのポトフからの着信じゃないか

 まるで誰かから引っ手繰るようにしてiPhoneを手に取り、回らない頭のまま二度、深呼吸をした。そして逃さないように、慎重かつ素早く、真緑色の応答ボタンをタップする。

「こんばんは。私はほくほくのポトフ
「こんばんは。知っています」
 僕は平静を装って応対した。声は震えていない。深い深い恐怖と、それを上回るほどの高揚で視界がちかちかした。頭も痛い気がする。涙が出そうだ。ああ、僕は遂に気が狂ったのだ
「こんな遅い時間にすみません。どうしてもお伝えしたいことがあったんです」
「構いませんよ。あなたと私との仲じゃあないですか」
「ありがとうございます。そう言って下さると嬉しい」
「いえ……それで、伝えたいこととは?」
 僕は殆ど恐る恐るというふうに(しかしそれをほくほくのポトフになるだけ悟られぬよう)言葉を選び、そして尋ねた。
「ええ。――実は、※※※※※達の中で、あなたは全く『※※※※※※※※※』には相応しくない、ということになったんです」

「……え? なんですって?」
 上手く聞き取れなかった。疲れているせいかもしれない。しかし、ほくほくのポトフは溜息交じりに、ああ……と嘆いた。
「もう一度、言いましょう。あなたは、
※※※※※※※※※』にも、
※※※』にも、
 ましてや『※※※※※※』という職業、
※※※※※』というフレーズ、
※※※※※※※※※※』という立場にも、
※※※※』氏、『※※※※※※』氏らとの交友関係などにすらも、
 相応しくないということに決まってしまったんです」
「――な、な、な、え、」それは、「それは、何ですか……?」
「お分かりになられないようですね」
 電話の向こうの人物は、フゥーッ、と息を吐いた。
「それは、そんな言葉は僕は、い、いや、」
 もしかして、もしかしてその※※※※※※※※※って、僕の。
「ま、待ってください。そんなこと誰が、だ、誰の権限で」
※※※※※達の……」
聞こえないんですよその言葉が!

 いつの間にか僕は自室で立ち上がっていた。足はぶるぶると震えている。
 僕の怒鳴り声を境に、会話は一度、シンと静かになった。そして、口火を切ったのは向こうだった。
「――悲しいことですが、お聞こえでないということが、そういうことなのです」
「何なんだ、なんなんですかあなた、突然の電話でそんな、僕にそんなことを」
「伝える必要などないと※※※※※には言われたのですが、それはあまりにも残酷すぎると」
「そんな……あなたね、そりゃそうだよ、そんなことは伝える方が――」
「知らずにあなたがあなたであろうとすることと、知って新たな人生を生きること……どちらが?」
 息が詰まった。顔が火照っている。頭も痛い気がする。
 これは、これは何かの間違いだ。僕はこんなことを想定してないぞ。

 駄目押しのように、電話の向こうの人物は言った。
「私の名前、覚えていらっしゃいますか?」

「……ああ、ああああ、あ」
 膝から崩れ落ちた。固くiPhoneを耳に押し当てたままで。
「ああ、もう切らなくてはなりません」

「待って……待ってください」
「そうしたいのですが、私にできるのは※※※くら※※※※※※

「行かないで、置いていかないでくれ……」
※※※※※※※※※※※※のです。では……またいつの日※※※※※※※※※※※※

「待って、待って、行かないでくれ、待ってくれ、」
※※※

「待って、待って! 待って!」

待って!

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※

 ビクン!

 

 

(あとがき:筆者はダ・ヴィンチ・恐山氏の活動を心より応援しています。)

 

(noteにて)